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元芸能人も投資詐欺師に マッチングアプリで甘い罠に付け込む特徴や手口とは

田中 あさみ田中 あさみ

2022/02/21

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イメージ/©️takasuu・123RF

「元本保証、必ず儲かる!」「上場確実の未公開株をあなただけに」、このようなうたい文句の広告や、投資話をもちかけられた場合「投資詐欺」の可能性があります。

近年、結果が不確定な投資に対して「必ず儲かる」と電話やメール、さらにはマッチングアプリを通じてお金をだまし取る投資詐欺師が急増しています。

2021年には、アイドルグループ元SKEのメンバーがマッチングアプリを通じて「バイナリーオプション」の話を持ちかけ、若い男性3人から計約250万円をだまし取ったというニュースもありました。
※バイナリーオプション:オプション取引を元にした金融商品の一種。

本記事では、投資詐欺とは何か、投資詐欺師の手口や特徴、筆者がSNSで体験した「買いあおり」についてお伝えしていきます。

投資詐欺とは

投資詐欺とは、結果が不確実でありながら未公開株やバイナリーオプション、外国通貨・暗号資産などに「確実に儲かる」と勧誘しターゲットに投資をさせる詐欺です。

数年前までは、高齢者をターゲットとする事例が多い傾向にありましたが、最近は投資詐欺師がマッチングアプリを通じてターゲットの恋心を利用する詐欺被害が多くなっています。

独立行政法人国民生活センターで公表されている出会い系サイト・マッチングアプリに関する相談件数・投資に関する相談件数は以下の通りです。


出典/独立行政法人国民生活センター『出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺にご注意を』

さらに、投資詐欺被害に遭った方に対して「探偵会社だが、詐欺にあった方の債権を回収していて、お金が戻ってくる可能性がある」と連絡し、手数料などと称しお金を振り込ませる「投資詐欺救済の詐欺」も存在します。

投資詐欺は立派な犯罪

投資詐欺は刑法や金融商品取引法、さらには出資法に抵触する恐れがあります。

刑法 詐欺
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

投資の助言や代行は、金融商品取引法で内閣総理大臣の登録を受けた者しか行うことができません。

金融商品取引法
第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。

投資商品のなかでも未公開株の販売は、未公開株の発行会社・金融商品取引業の登録を受けた証券会社に限られ、日本証券業協会の規定により、一定の銘柄以外の勧誘は基本的に禁止されています。

金融商品取引業の登録に関しては、金融庁のホームページに掲載されている「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認できます。

登録されていない会社から投資の勧誘を受けた場合、投資詐欺の可能性を考えましょう。

出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)
第一条 何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。

「後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示」=「元本(と利益)を保証します」ですので、「元本・配当保証」といううたい文句は違法となります。

違反した者は「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」と記載されています。

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元SKEメンバーが投資詐欺で逮捕 投資詐欺師の手口や特徴とは

冒頭で触れた通り21年3月には、投資詐欺でSKE48の元メンバー・山田樹奈が逮捕される事件が発生しました。

19年8月頃から20年3月まで、仲間たちと出会い系アプリで知り合った男性に投資話を持ちかけ、指導料と称し20代男性3人から計250万円をだまし取ったということで逮捕されました。

山田被告は、出会い系アプリやSNSで「山本ゆき」と名乗り、嘘のプロフィールに接触してきた男性らを呼び出す勧誘役を担っていたよう。元アイドルで可愛らしい容姿をしているため、相手の恋心や「また会いたい」という感情に付け込んだ詐欺の可能性が推測されます。

裁判が行われ、21年12月に山田被告は名古屋地方裁判所で裁判官から懲役1年6カ月、執行猶予4年(求刑懲役1年6カ月)の判決を言い渡されました。

バイナリーオプションとは為替相場・株式相場などであらかじめ決められた時点のレートが高くなるか低くなるかを選ぶ取引で、一見シンプルな取引に見えますが高度な専門知識が必要な高リスク・高リターンの投資です。

金融庁のホームページにも「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」という注意喚起があり、USBメモリーで情報を売りつけられるトラブルが増加していると記載されています。

独立行政法人国民生活センターでは、全国の消費生活センターでバイナリーオプション取引の相談、特に20代が増加していると公表しています。

バイナリーオプション自体は違法ではありませんが、山田被告のグループのように、金融商品取引業に無登録の詐欺業者もありますので、取り引きを行う際には業者として登録されているかを確認しておきましょう。

投資詐欺師の特徴・手口とは? 「二部構成」と「詳細を濁す」

バイナリーオプション以外で投資詐欺師のターゲットとなる金融商品には、仮想通貨や海外投資ファンド、未公開株や社債の勧誘などがあります。

仮想通貨は、20年にビットコインが急上昇したこともあり「近々上場する仮想通貨がある」「儲かる仮想通貨を知っている」などと話を持ちかけるケースが増えているといいます。

海外投資セミナーと称し最終的には海外ファンドに投資させる団体もあり、セミナーの特徴は「最初に不安をあおる」ことです。

老後の資産形成の話から入り、日本の財政は借金が多く、このままハイパーインフレが起こるなどと発展し、最終的には「中国に買収される」「日本は国家破綻する」などと不安をあおり、投資話に持ち込み契約させるそうです。

基本的にセミナーは前半で「不安をあおる」、後半で「投資話を持ち掛ける」という「二部構成」で成り立っています。

セミナーだけではなく、勧誘全般で「二部構成」で話を展開する投資詐欺師は多いといいます。最初に不安をあおられたときには注意しましょう。

投資詐欺師たちは、セミナーでスーツを着てハキハキと話しますが、二部構成のほかに「商品の詳細を説明しない」という特徴もあります。

とある海外ファンドのセミナーでは、「年○%のリターンを上げる」と言いながら具体的に「どの銘柄にどの位の配分で投資するのか」の説明がなく、結局詐欺であったことが分かっています。

投資信託(ファンド)を扱う証券会社は通常ファンドに組み入れている銘柄・割合を公表しており、定期的に運用報告書を更新しています。詳細を聞いて濁される場合には気を付けましょう。

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投資インフルエンサーの買いあおりに乗って損切り…筆者の実体験

筆者は米国株投資を行っており、投資詐欺ではないものの、投資インフルエンサーの「買いあおり」で株を購入し、損をしてしまった体験があります。

TwitterなどのSNSでフォロワー数が数万人に及ぶ投資家は「インフルエンサー」と呼ばれ、なかには相場の分析が的確で影響力を持ち書籍を出版する人、Youtube配信をする人も存在します。

インフルエンサーのなかには、SNSを通じて特定の銘柄を話題に出し個人投資家の注目を集める「買いあおり」を行う人が存在します。

筆者も米国に住むとあるインフルエンサーをフォローしており、20年末に再生可能エネルギー銘柄が高騰した際、インフルエンサーが「○○(会社名)これ面白いんじゃない?(中略)粗利低いけど、成長率もえげつない」とツイートがありました。

20年11月22日にツイートされ拡散、株価は27日まで47.11ドルに上昇しましたが、12月始めには34.09ドルに下落し、その後上昇と下降を続けながら21年5月には3分の1の14.23ドルまで落ちてしまいました。

再生可能エネルギーの銘柄全般が上昇していたこともありますが、インフルエンサーはほかの銘柄でも「買いあおり」をしていたことが後から分かりました。

インフルエンサーの目的は、あまり注目されていない小型銘柄を購入後にSNSで買いあおり、ツイートを見た個人投資家が購入し株価が上昇したところで売却することです。上記のインフルエンサーのツイートは違法行為ではなく、筆者は自己責任で株式を購入したため、数万円の損はしたものの「勉強代」と自らを納得させています。

買いあおりに乗ってしまった筆者が言えることではないかもしれませんが、投資は基本的に自己責任で「自身で検討・判断し購入する」ことが大事です。投資詐欺師に付け込まれないよう自ら情報収集を行い、堅実な資産運用を行っていきましょう。

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この記事を書いた人

2級FP技能士・ライター

北海道在住。大学在学中に2級FP技能士を取得。 会社員を経てFP資格を活かし、ライターとして不動産・金融・相続・法律分野の記事を多数執筆する。「難しいことを分かりやすく」をモットーにライターとして活動中。

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